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プリント基板作製

FlatCAM

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FlatCamはKiCADから出力されたガーバーデータを読み込んで、CNCのGrbl制御基板に送るためのGコードに変換します。

ガーバーデータ 部品面から見た裏面の透過図

ガーバーデータは配線パターンそのもの、基板の銅箔そのものを表現しますが、CNCで切削加工するのはパターンの外周を削り取ってパターンを分離絶縁することです。上図の青い線の交点がXY座標の原点です。KiCADのPCBエディターで基板外寸の右上を原点としてあります。

その為完成基板には不要部分がまるでベタパターンのように残ります。不要部分をすべて削る方法も用意されているようですが、この写真のように不要銅箔部分を残す”Isolation Routing”がデフォルトです。基板の裏(部品面)から見ていますのでガーバービューとは左右反転しています。また外形も切り取っていませんので周囲寸法は異なります。

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FlatCAM8.994(2023/11時点での最新版)

起動画面

File -> Open -> Open Gerber でパターンの表(***-F_CU.gbr)または裏面(***-B_CU.gbr)のどちらか実際の基板で裏面にしたい方のデータを読みこみます。(基板屋さんに発注する場合はF_CUは部品面、B_CUは半田面と決まります)

続いてFile -> Open -> Open Excellonでドリルデータ(***.drl)を読み込みます。

パターンは裏面にしたいのでデーターを左右反転します。Tool -> 2-Sided PCB

Source Object : Gerber, Bounds Values : 0(デフォルトのまま), Mirror Operation :Axis=Y / Reference=Box / Reference Object=Gerber を選択しMirrorボタンを押すと配線パターンだけが左右反転し、ドリル穴は元の位置に残りますので配線パターンとは位置がずれます。

続いて同様にSource Object だけをExcellonに変更してMirrorボタンを押すとドリル穴も左右反転し再び基板パターンと合致します。

注:穴を開けずパターン面に部品を半田付けする(表面実装)場合は反転せずにしておきます。

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パターン加工用Gコードを出力します。

配線パターンの出力:Projectタブ内でガーバーファイル(*.gbr)を選択してからPropertiesタブを開く(またはガーバーファイルをダブルクイックする)とToolsの項目内にIsolation Routingのボタンがありますので押します。次にGenerate Geometryのボタンを押します。

Tools TableにDiameter項目がありますのでtool(切り取るエンドミル、Vカッター)によって削り取られる溝の幅を入れます。Vカッターの先端が0.1mmだとしても回転精度(芯ブレ)の加減で0.2mm以上になったりすることがありますのでとりあえずは0.2mm、TTはVとします。(デフォルトでは0.1になっているところをダブルクリックで変更可能です)このDia(meter)は重要で配線パターン等の線幅に影響します。カッターが配線やランドの淵そのものを削ると半径分は狭くなりますので場合によっては配線パターンが無くなってしまいこともあります。ここで入力したToolsの半径分はパターンの端から離れたところを通りパターン領域を確保するようです。

従って、Diaを大きくとればパターンが削られてやせ細ることはありませんがその代わり隣接したパターンとの離隔が十分とれない場合は削るのをやめてしまいますので隣とショートします。

Prameters for Tool1は先に設定したToolsの詳細項目ですがブレなどの誤差が大きい前提で考えることにしますので適当に入れます。先ずはV-Tip Dia:カッター(エンドミル)の先端径ですがTools Tableで指定した0.2mmより若干小さな値にします。次にV-Tip Angle:カッターの角度(Tools TableでTTにVを選んでいるので)Vカッターの角度を入れます。Vカッターだと切り込む深さによって半径が変わるので自動計算してくれます。するとCut Z(切り込み深さ)が自動入力されます。Gコードが出力されてからテキストエディターで深さだけを一括変換してもよいのですがここでDiaとAngleを適当にいれてZが希望する値なるようにするのが楽です。Zは-0.1位が良さそうです。(精度が十分であれば銅箔の厚み(0.035程度)以上あれば良いのですが現実的には高精度を求めるのは無理でしょう。)

”2”の図と比べるとパターン周りに赤色の線が追加生成されていますが、ここがカッターの通る中心のようです。多分パターン際よりカッター半径分外側にあります。

Generate CNC Job Objectのボタンを押します。

Export CNC Code:Save CNC Codeボタンで保存します。これでパターン切削用Gコードが出来上がります。必要に応じて切り込み深さを調整します。

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穴あけ加工用Gコード

”3”パターン加工用と同様です。Projectタブ内でドリルファイル(Excellonファイル、*.drl)を選択してからPropertiesタブを開くとExcellon Object画面が出ます。Tools TableにはKiCABのPCBエディターで設定したドリル穴(フットプリントや取付穴など)径のドリルが選択されています。Drilling Toolボタンを押します。Drilling Tool Excellon画面になります。Parameter for Multiple Toolsの項目はCut Zは穴の切り込み深さですので基板の厚み以上が必要です。一般的な基板は1.6t程度なので-2(基板上面を0として下方向2mm)のままです。貫通穴だけですのでMulti-Depthは不使用です。Common Parameters未使用です。Diameterで示されるドリル穴は今回は3種です。3種の穴をCNCを使ってドリル刃を変えながら開けるにはこの項目設定が必要と思います。ここを無視すると0.8,1.0,3.2の3種ともツールチェンジ無しで空きます。一番小さな0.8のドリルを使いすべて同じ穴径で開けることにします。

Generate CNC Job Objectボタンで穴開け用Gコードを作成し、保存します。

基板のパターンについて

感光基板などでは配線そのものが加工するためのデーターになります。配線は描かれたとおりに感光材に焼き付けられてに被膜となって残り、それ以外の部分はエッチング液にさらされて溶けてなくなり最終的に描かれた配線が残ります。対してCNCでは描かれた配線部分の外周を切削し、配線部分とそれ以外の銅箔とを分離します。分離された無効な銅箔もそのまま残ります。(無効部分を切削する方法もあります)

両面基板について

CNCで両面基板を切削加工する場合は片面を削った後必ず一旦基板を外して反転配置することになりますが、この時の位置合わせはかなり難しいです。位置合わせ用ドリル穴をなるべく長い距離を取って2点設けておくと合わせ易くなります。理屈の上では簡単ですがかなりコツが要ります。今回の説明では片面基板に限定いたします。

データ反転について

ガーバーデータは部品面及び半田面の2層両面の、ともに部品面から見た図を表しますので半田面(両面基板の裏側)を切削するのには裏側から見た通りになるようにするため反転しなければなりません。表面実装にするのなら反転不要です。

Diameterについて

”3”ではDiaをとりあえず0.2mmとしましたが0.5mmとすると

のように狭いところにはVカッターが通ることができないので切削せずにパターン間がつながったままになります。0.1mmのカッターで0.1mmの溝が切削できればこの件については解決しますが半田レジストが無い基板ですので0.1mmのギャップでは半田ブリッジが起こり易くなります。丁度良い設定は個々の案件で異なりますので手探りですが0.2~0.3mm位にしてピン間を通さずジャンパー線を利用するといったところが解決策でしょうか。回路図上でジャンパー線を入れるのは面倒なので、片面基板を制作する場合でもPCBエディターでは両面基板として、配線パターンをなるべく片面に配置し反対面のパターンをジャンパー線にするといった方法が便利です。

Gコードについて

Gコードは別ページで改めて説明します。プレーンテキストですので使い慣れたテキストエディターで変更、作成可能です。FlatCAMから出力されるような複雑なものは事実上困難ですが直線で四角を描くといった単純なものは手入力の方が簡単かもしれません。